第69回エンタテインメントコンピューティング研究発表会【参加報告】 by 武内謙晴

第69回エンタテインメントコンピューティング研究発表会,エンタテイメントコンピューティングセッションでB3の武内さんが発表

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2023年10月26日(木)、27日(金)に北海道室蘭市で開催された,情報処理学会 第69回エンタテインメントコンピューティング研究発表会で、B3の武内さんが発表しました。

はじめに

山西研究室B3の武内です.2023年10月20日から21日に北海道室蘭の室ガス文化センターを会場に開催された「第69回エンタテインメントコンピューティング(HCI/EC合同)研究発表会」での研究発表について報告いたします.

私は『エンタテイメントコンピューティング』のセッションにて『マジックの手順に対する情報学的モデリングの一検討』という表題で発表しました.

研究概要

マジック・手品・奇術(以下,マジック)は,現在テレビやショーなどで鑑賞することができるエンタテインメントの一種です.これまでマジシャンは既存の知識や技術を参照/応用して,新しいマジック手順の作成や手順の再構成を行ってきました.しかし膨大な技術・知識が容易に共有され情報過多となった現在,マジシャンのマジック手順の構成は難しくなっています.この問題を解決するためには,マジックの手順構成に必要な技術・知識を統一的情報表現によって整理し, 知識・手順と観客の認知との対応付けを行う必要があると考えました.

マジックを統一的情報表現によって整理するために,以下2点のコンテンツ特性に着目しました.1) 時間推移に応じて,マジシャンの操作と観客の心理状態が遷移する,2) 論理的矛盾が生じないマジシャンの操作により,観客に論理的矛盾を感じさせるという特性です.観客は,マジシャンの操作に対して一般的な物理法則を当てはめて想像する「期待」と,実際に目の前で起きる事実に対する「実測」の間での不整合により,マジックのおもしろさを体感します.他の時間的遷移を伴うコンテンツとは異なる点として,マジックでは「演出」という概念が用いられます.同じ「行動」でも,「演出」を変えることにより,「消失と出現」という現象に見せることも,「移動」という現象に見せることができます.これらの特性,演出の概念から,マジックを表現するためのオブジェクトとして,マジシャンによる行動,演出,現実での物理現象である実測と観客の期待を用意しました.

本研究ではマジックの情報学的モデリングに対してUnified Modeling Language(UML)の1種であるシーケンス図の拡張を考えました.シーケンス図は,複数の系列を時間軸に沿って表記可能なため採用しました.これらの4種類の時系列によってマジック手順を情報学的にモデリングし,マジックの手順情報の整理の可能性を検討しました.

本検討での表記を行うことで,マジックの構成要素間の関係性が可視化され,マジックの何がどう不思議なのかといったことをわかりやすく表記することが可能になりました.また,同じ演出,実測,期待を生みだす行動であれば技術の代替が可能であることから,マジックの技術選択の推薦,最適化が可能になることが期待されます.マジシャンは,マジック手順の構築において,1 つの技術だけに注目するのではなく, マジックのショー全体の流れを踏まえて技術を選定することもあります.時間軸での前後関係や, 時系列ごとの関係性を分析することで, より良い手順構成を支援できる可能性があると考えています.

感想

「第69回 エンタテインメントコンピューティング(HCI/EC合同)研究発表会」での発表は,非常に貴重な経験を得ることができました.発表以前の論文執筆段階からわからないことも多く,研究を含め多くのことが新鮮でした.

発表会での発表によって,自分自身が気づいていない多くのご意見やお話を伺うことができ,より一層本研究や今後の研究について考える機会を得ることができました.

最後になりますが,協力応援をしていただいた研究室の諸先輩方には大変感謝を申し上げます.ありがとうございました.

text:エンピツ舎