山西研究室M2の武内です。 2026年9月1日から3日に京都産業大学にて開催された「エンタテインメントコンピューティング2026(EC2026)」での研究発表について報告いたします。

今回は、私が筆頭著者として取り組んだ
「登場人物間の時系列に沿ったやりとりの学習を目的とした群像劇再構成パズルゲーム:AMSET」に加えて、B4の藤中さんが筆頭著者を務め、私も共同研究者として参加した「一G一会なTRPGのアーカイブに向けて」の2件の研究発表に参加しました。
【登場人物間の時系列に沿ったやりとりの学習を目的とした群像劇再構成パズルゲーム:AMSET】
歴史や特殊詐欺など、現実世界の出来事の多くは、複数の人物や組織が時間の経過とともに影響し合うことで構成されています。このような事象を理解するには、「誰が」「いつ」「誰に対して」「何を行ったのか」を整理し、それぞれのつながりを捉える必要があります。

本研究では、このような事象を「群像劇型事象」と定義し、断片化された情報をパズルのように並べ替えながら全体構造を学習する「AMSET(Assembling Mined-Signs for Ensemble Timelines)」を開発しました。


AMSETでは、複数の人物によるやりとりを、断片化された会話カードとして提示します。盤面では、横方向にそれぞれの登場人物、縦方向に時間の流れを配置しています。
プレイヤはカードに書かれた内容を読み、「これは誰のやりとりなのか」「この出来事はいつ起こったのか」を考えながら、それぞれのカードを適切な人物と時系列の位置へ並べていきます。
一般的な文章では、書かれている情報を順番に読みながら内容を理解します。一方、AMSETでは、最初から正しい情報構造が提示されているわけではありません。プレイヤ自身がカードを比較し、構造を推理しながら配置することで、自分自身で全体構造を組み立てていきます。つまり、情報を「読む」だけではなく、「並べ替える」という行動を通して因果関係(特に人物と時系列)を能動的に理解することを狙ったパズルです。 大学生・大学院生15名を対象に、AMSETによる理解の特徴を分析するための実験をしました。題材には、還付金詐欺と、織田信長・豊臣秀吉・徳川家康を中心とした戦国時代の歴史を使用し、その学習を目的としたパズルを作成し、使用してもらいました。

実験の結果、いずれの提示方法でも、事例の大まかな内容を理解できることが確認されました。
AMSETをプレイした参加者では、単に情報を読むだけではなく、人物と時系列を対応付けながら、カードの配置と修正を繰り返す様子が確認されました。
群像劇の内容や構造を理解、推理することで、パズルを進める様子が確認されました。
また、パズルを解くことで、内容を理解する様子も確認されました。
例えば、「桶狭間の戦い」と「関ヶ原の戦い」が、それぞれいつ起こり、誰が関わった出来事なのかを知らない参加者がいました。
この参加者は、分からないカードを最後まで残し、先に分かるカードを配置していきました。その後、残ったカードを試しながらパズルを完成させました。
プレイ後のテストでは、桶狭間の戦いが織田信長、関ヶ原の戦いが徳川家康に関係する出来事であることや、その時系列を正しく理解できていました。

つまり、「理解したからパズルを解ける」だけではなく、「パズルを解くことで、理解する」という様子も確認されました。これらの結果から、AMSETによって、文章を一方向に読むだけではなく、人物関係と出来事の順序を自分自身で対応付ける、探索的な理解を促せる可能性が示唆されました。
現時点では、扱いづらさなどや一覧性の確保、対象とするコンテンツに合わせた適切な提示、パズル制作の難度など、多くの課題が存在します。今後は実験によって得られた課題や、本研究会で得られた知見、意見などを活かし、より良く広く社会に貢献できるものにしていくつもりです。
【一G一会なTRPGのアーカイブに向けて】
B4の藤中さんが筆頭著者を務め、私も第2著者として共同研究者として参加した「一G一会なTRPGのアーカイブに向けて」についても簡単ではありますが記述します。
この研究は、TRPGという、会話を中心にストーリーを進めるゲームに着目し、その体験をアーカイブするための手法として、画像生成を用いることを検討した研究です。
TRPG(テーブルトークRPG)とは、コンピュータを使わず、紙や鉛筆、サイコロなどの道具と会話を使って遊ぶ対話型のロールプレイングゲームです。近年のデジタルゲームのRPGは、行動時の選択肢やルールは、開発者の想定内で遊び、自身がキャラクターの役割となり、ゲームを進行します。しかし、TRPGは、行動時の選択肢やルール判定を会話で行うことで、より柔軟に、キャラクターに成り代わることができます。

TRPGは、プレイやルール、それによって生まれるストーリーがより自由であり、参加者によって大きく異なることが魅力の一つになります。その魅力・体験をアーカイブする際、これまでは録画・録音をしていました。しかし、プレイは10時間など長時間に及ぶことも多く、録画だけでは後から振り返ることが難しいという課題があります。

そこで本研究では、TRPGのプレイ中の発話ログから画像を生成し、プレイ体験を短時間で振り返れるアーカイブ方法を検討しました。具体的には、「会話が盛り上がった箇所」と「シナリオ上の場面ごと」の2つの方法で発話ログを分割し、それぞれ画像を生成して比較しています。比較することで、どのように内容を区切るのが適切なのかを検討しました。 実験の結果、画像を用いることで、動画よりも短時間でプレイ内容を概観しやすいことが確認されました。一方で、画像間の人物の対応や時系列、参加者同士の細かなやりとりなどは失われやすく、TRPG特有の一度限りの体験をどのように残すかという課題も明らかになりました。

【感想】
「ECシンポジウム2026」での発表は、非常に貴重な経験となりました。今回で4度目の研究発表となりました。これまでの経験を活かせたところも多かったですが、まだまだ未熟な点が多く、今後に繋げていきたいと考えています。
発表を通して、自分自身では気づかなかった多くの課題や今後の展望についてご意見を伺うことができ、研究内容や今後の研究の方向性について、より深く考える機会を得ることができました。
また、他研究室の先生や学生さんとも沢山交流することができ、刺激になりました。
また、今回初めて共同著者として他の人の研究に携わることもでき、貴重な経験となりました。研究を一緒に進めてくれ、初めての論文投稿・発表にも関わらず本当によく頑張ってくれた藤中さんに心より感謝いたします。何より、藤中さんとの研究で一般セッション賞と対話発表賞を受賞できたことは、非常に嬉しく思います。私が筆頭著者の研究でも、対話発表賞を受賞できました。共同研究も含めると3つの賞を頂戴し、大変光栄に思います。 最後になりますが、ご協力応援をしていただいた先生、研究室の同期、後輩に感謝申し上げます。ありがとうございました。
