第206回HCI研究発表会【参加報告】by 藤本直樹

2024年1月15日-1月16日に沖縄産業支援センターで開催された「第206回HCI研究発表会」でB4の藤本さんが発表しました

WHAT WE DO on January 2024

はじめに

山西研究室B4の藤本です。2024年1月15日-1月16日に沖縄産業支援センターで開催された「第206回HCI研究発表会」での研究発表についてご報告いたします。私は、1月16日のセッション7「音・空間」にて、「環境音付与による音楽印象操作の効果検証」というタイトルで発表しました。本報告記事で掲載する図は、「第206回HCI研究発表会」の発表資料の一部になります。

発表内容

本研究では、環境音を用いた音楽印象操作の効果を検討しました。
波の音が海辺の風景を、人の足音が繁華街を想起させるなど音は様々な風景を想起させます。音により認識、知覚される風景(サウンドスケープ)に関する調査は盛んにおこなわれており、環境音が環境認識に有効に働くことは広く知られています。このことから環境音を楽曲に「トッピング」することで任意の情景を演出し、音楽印象を変化させることができるのではないかと考えました。そこで、環境音の付与が音楽印象に与える影響を調査するための実験を実施し、結果を基に上図に示す2つのリサーチクエスチョンについて考察しました。

実験では30名の参加者を3群に分割し、それぞれ異なる環境音または無音が付与された楽曲2曲を聴取させ、その後音楽印象に関する設問に回答させました。設問には「音楽をいつ聴いているように感じましたか」といった自由記述形式で音楽印象を評価するものを4問、「情景が想起される」のように提示されたトピックに対しどの程度同意できるかを5段階で評価するものを2問用意しました。

5段階評価形式の設問に対する回答から、環境音付与が感情および情景が想起される程度に影響するか調査したところ、有意な差は検出されませんでした。このことから本発表では「環境音の種類や有無が情景、感情が想起されるか否かに影響するとは言えない」と主張しました。音楽印象は、環境音が付与されている場合とされていない場合で同程度に想起されるようです。

自由記述形式の設問に対する結果に基づく考察では、環境音の差が想起される情景および感情を変化させたことが示唆されました。楽曲から想起された場所や時間帯に関する回答の傾向が条件ごとに変化したことや、同じ環境音であっても楽曲ごとに異なる影響を与えたことが確認されました。

今回の研究では環境音付与により楽曲印象が変化すること、変化の内容は環境音が持つサウンドスケープと楽曲が持つ音楽印象が相互作用し決定される可能性があることが示されました。今後は環境音付与が音楽印象に与える影響の一般性の検証や、より詳細な知見の獲得を目指します。

感想

「第206回HCI研究発表会」での発表は様々な学びを得ることができ、非常に有意義な成長の機会となりました。投稿に至るまでの取り組みや会場での質疑応答を経て自身の研究内容とその意義についてより深く考えたことは、今後研究を続けていく上で重要な糧となると感じています。進学後も同テーマでの研究は継続する予定ですので、今後の進展にもご期待ください。