WHAT WE DO on May 2021

最近発表した論文を3回に分けてわかりやすく
ご紹介します

Episode 1

ストーリーを魅力的に伝えるためにはどのような情報を視聴者に提示すれば良いのか?連続ドラマの冒頭で流れる「前回までのあらすじ」は,その代表的な好事例のひとつです.長いストーリーでは,登場人物間の関係を忘れてしまったり,大切な伏線や初期設定などを忘れてしまう可能性があります.連続ドラマの「前回までのあらすじ」ではこれらの情報を効果的に提示することで,内容理解やこれから見るエピソードへの理解を高めていると考えられます.

そこで,人気の海外ドラマを3シーズンごと9作品,全490エピソードの「前回までのあらすじ」を分析してみました.分析の方針としては,初歩的な分析として,「あらすじで使われているセリフが最初に出てきたのは,過去のエピソードのどこか?」を調べてみることにしました.ただし,全く同じセリフが使われた場合だけを対象としているので,セリフが改変されている場合には対応できていません.

その結果,以下のことがわかりました.

   ・ 各シーズン中のエピソードの相対位置によって採用されるセリフの傾向がある

   ・ 固有名詞は複数回,あらすじに採用される傾向がある

   ・ あらすじ中のセリフの出現順序は,本来のストーリー中での出現順序とは異なる

今回は,このうち,1つ目の要素について全体的な傾向を説明します.

まず,横軸をエピソード,縦軸をセリフの過去相対位置としたグラフを作ってみました.

過去相対位置というのは,そのあらすじが再生されたエピソードの開始時を1,シーズン1のエピソード1の開始時を0とした場合に,セリフがどの時間的な位置で出てきたのかを表現する位置です.赤,青,緑はそれぞれ,シーズン1〜3を示します.

シーズン2やシーズン3を見ると,過去相対位置の値が小さいところにもデータが存在しており,どの作品でもシーズンを超えて採用されるセリフが存在します.また,どの作品を見ても,シーズン2とシーズン3は過去相対位置が非常に高い位置と低い位置に分割されており,中盤でのデータが少ないように見えます.そこで,全作品のデータをまとめて,傾向を見てみることにしました.

左からシーズン1〜3をそれぞれしめしています.シーズン1は冒頭部分のセリフがエピソードによらず,多く参照されています,一方で,終盤に近付くにあたって,直前のエピソードのセリフの参照が微増しています.一方で,シーズン2とシーズン3ではストーリー全体の冒頭と終盤から集中してセリフが採用されています.それ以外は,過去のエピソード全体から少しずつ採用されているようです.

どうやら,連続ドラマのあらすじでは,ストーリー全体の設定などに関わる内容とエピソード直前の出来事にフォーカスしたセリフが採用される傾向にあることがわかりました.

本研究成果は,「電子書籍における読書状況に応じたストーリー情報呈示システムの開発,日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C),20K12130,研究代表」の支援のもと,以下の研究成果として発表したものの抜粋です.

山西良典,西原陽子: 連続ドラマにおける「これまでの…」の基礎分析, メディアエクスペリエンス・バーチャル環境基礎研究会, 2020年9月8日

次回の続きをお楽しみに!!

Looking back, it was a detour.

やらなければならないこと、やらなくていいこと、やらなくてもできること

わかっているようで,わかっていないことが多いこの3つのキーワード.この区別に気づくと研究がとてもやりやすくなる.

  まずはやってみて,疑問に思う.これでいいのかな?

  これ,どう思う?

  こっちの内容の方が近くない?

インプット,アウトプット,フィードバックの繰り返しが研究室で展開されている.一人で黙々と研究テーマに対峙するイメージとは随分違う.一人とみんなでやるところのメリハリがなんともいい感じだ.遠回りで楽しい発見に出会うのもいい.しかし,見なければいけない方向を見失い続け,それに気づかないのは研究として,ちょっと残念なことになる可能性が大.早めの手当と軌道修正が必要だ.道具が揃っていても使い方を間違っているのはもったいない.

ゼミの時間は発表者の言葉を,いつでも見返すことができる議事録として残す.互いに研究の進捗状況を確認し合うことができるシステムを使うことは,プレッシャーにも励みにもなる.

リモートは離れているように語られることが少なくないけれど,実際は細かい情報を常にデジタルで管理できたり,メッセージを入れておけば,相手の都合に合わせて返事が来るので,気を遣って相談を後回しにする必要がないので、実は近いともいえるのだ.対面とリモートをうまく使い分けている.

今となっては使い古された感の拭えない「報連相」という言葉.上司が部下に「報告・連絡・相談」させやすい環境づくりをして業務を円滑にするというビジネススキルのひとつだ.もはや声高に使うスキルでもないし,不要だと考える経営者もいる.しかしひとつの道具として使いこなせると,なにかと便利である.「放っておくとやばいこと,問題なく進めていること,できていることから次のステップへ」がわかる。この区別ができるとできないとでは大違い.考えることと判断すること.たくさんの選択に利用できる.

だからこのスキル、一生もの.

text by : エンピツ舎